浣腸は医行為か|ヘルパーに頼めない理由と、訪問看護という答え

「浣腸は医療行為だから、ヘルパーさんには頼めません」と言われたことはありませんか。

国の通知では、条件を満たす浣腸は「原則として医行為ではない」とされています。それなのに、実際には引き受けてもらえないことがほとんどです。

このずれには、はっきりした理由があります。通知の原文を読みながら、結局どこに頼めるのかを整理します。

この記事でわかること

条件つきで、医行為ではありません

根拠は、平成17年7月26日 医政発第0726005号という厚生労働省医政局長の通知です。「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」という長い名前がついています。

この通知が出た背景は、通知自身に書かれています。

高齢者介護や障害者介護の現場等において、医師、看護師等の免許を有さない者が業として行うことを禁止されている「医行為」の範囲が不必要に拡大解釈されているとの声も聞かれる

厚生労働省 医政発第0726005号

そのうえで、別紙の注1に、こう挙げられています。

市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器を用いて浣腸すること

厚生労働省 医政発第0726005号 別紙 注1⑥

ただし「どんな浣腸でも」ではありません。器具の条件が、数字で決められています。

挿入部の長さ5〜6センチメートル程度以内
グリセリン濃度50%
1歳〜6歳未満10グラム程度以下
6歳〜12歳未満20グラム程度以下
成人用40グラム程度以下

お手元の浣腸器の容量を確かめてください。年齢に対して容量が大きいものを使っている場合、この条件から外れます。それが、断られる理由になっていることがあります。

ついでに書いておくと、坐薬を肛門から入れることも、同じ通知で介助できる行為に挙げられています(3つの条件を医師や看護職員が確認していることが前提です)。浣腸より坐薬のほうが話が早いことがあります。

それでもヘルパーさんが引き受けないのは、なぜか

ここがいちばん知りたいところだと思います。法律上できるはずなのに、実際には断られる。その理由も、同じ通知の中にあります。

理由1 状態によっては、医行為に戻ります

病状が不安定であること等により専門的な管理が必要な場合には、医行為であるとされる場合もあり得る

厚生労働省 医政発第0726005号 別紙 注2

「原則として医行為ではない」であって、「絶対に医行為ではない」ではないのです。障害の重い子の場合、事業所はここで慎重になります。

理由2 事故のときの責任は、別に判断されます

今回の整理はあくまでも医師法、歯科医師法、保健師助産師看護師法等の解釈に関するものであり、事故が起きた場合の刑法、民法等の法律の規定による刑事上・民事上の責任は別途判断されるべきもの

厚生労働省 医政発第0726005号 別紙 注4

これが決定的です。「医師法違反にはならない」と「何かあっても責任を問われない」は、まったく別のことです。浣腸には、直腸を傷つける、急に血圧が下がる、といったリスクがあります。事業所として引き受けにくいのは当然だと思います。

つまり「法律が禁じているから断られている」のではなく、「責任を負えないから断られている」のです。ここが分かると、聞き方が変わります。「通知では医行為ではないはずです」と言っても、たいてい話は進みません。

理由3 研修を受ければできる、という道筋がありません

研修を受けた介護職員が医療的ケアを行える制度があります。ただし対象は、たんの吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)と経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻)の5つだけです。

浣腸はここに含まれません。医行為ではないとされているので、そもそも入る必要がないのです。ところが結果として、事業所の側に「これを修了しているから大丈夫」と言える拠りどころがないことになります。

確実に頼めるのは、訪問看護です

現実的な答えはこれです。看護師なら、迷う必要がありません。浣腸は看護師の業務の範囲にはっきり入っています。

障害のある子の訪問看護は、年齢に関係なく医療保険で利用します。かかりつけ医に訪問看護指示書を書いてもらうところから始まります。

相談するときに、最初に確かめておきたいのは曜日と時間です。来てもらう日を、排便のリズムに合わせて組めるかどうか。ここが合わないと、結局ほとんど親がやることになります。

制度の入り口は訪問看護サービスにまとめています。

ショートステイでも、同じ壁があります

あまり知られていないところです。浣腸が必要な子は、ショートステイの日数を伸ばせないことがあります。

1泊なら、タイミングをずらせば足りることが多いです。ところが日数が長くなると、滞在中に必ず対応が必要になります。そこに看護職員がいるかどうかで、受けてもらえる施設が絞られます。

申し込みのときに聞いておくとよいのは、この2つです。

  • 看護職員が、滞在中ずっといるのか 日中だけ、という施設があります
  • 連泊のとき、排便の対応をどうするのか 受け入れの上限日数が、ここで決まっていることがあります

長く預けたいときほど、ここが効いてきます。申し込みの流れはショートステイに書いています。

学校や放課後等デイサービスでは

施設ごとの判断の幅が大きいところです。看護師が配置されているかどうかで、答えが変わります。

お願いするときは、「やってください」ではなく「こういう状態なら、どこまでお願いできますか」と聞くほうが進みます。通知の注2には、事業者の側がすべきこととして、こう書かれています。

介護サービス事業者等はサービス担当者会議の開催時等に、必要に応じて、医師、歯科医師又は看護職員に対して、そうした専門的な管理が必要な状態であるかどうか確認することが考えられる

厚生労働省 医政発第0726005号 別紙 注2

つまり「主治医に確認してもらう」という手順は、通知の側にすでに用意されています。ここを踏んでもらえないかと持ちかけるのが、いちばん現実的です。

親がずっと抱えていること

制度の話はここまでですが、いちばん書いておきたいのはここです。

浣腸は、親にとってかなりの負担です。身体の負担もありますが、それ以上に気持ちの負担が大きいです。うまくいかない日が続くとこちらが消耗しますし、予定を立てても排便の時間に縛られます。

そして、この大変さは外から見えません。医療的ケアの一覧に載っていないので、話題にも上がりません。「たいしたことではない」と扱われがちなのに、毎日のことです。

だからこそ、看護師さんが来てくれる日があるだけで、本当に助かります。「自分でできるから」と抱え込まずに、訪問看護を入れられないか相談してみてください。

よくある質問

家族がやるのは問題ないのですか

医師法が禁じているのは「業として」行うことです。家族が家族に対して行うことは、これにあたりません。ただし安全かどうかは別の話です。やり方は、必ず主治医や看護師に教わってください。

「医療的ケア児」に入りますか

医療的ケアとして数えられるのは、たんの吸引や経管栄養、人工呼吸器などです。浣腸だけであれば、ふつうは医療的ケア児には含まれません。

ただし現場の受け入れでは、似た扱いになることがあります。名前の上では対象外なのに、実際には同じ壁にぶつかる。制度の名前と、現場の運用がずれているところです。

断られたら、どう聞き直せばいいですか

「医行為ではないはずです」と押すより、次のように分けて聞くほうが進みます。

  1. 事業所として引き受けない方針なのか、うちの子の状態が理由なのか
  2. 状態が理由なら、主治医に確認してもらえば変わるのか
  3. 引き受けられないなら、訪問看護と組み合わせる形にできないか

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