イヤーマフの選び方|聴覚過敏の子と外出するときに

イヤーマフは、もともと工事現場などで使う防音用の保護具です。それが、聴覚過敏のある子の外出を助ける道具として使われるようになりました。

ここでは、選び方と、学校や施設で使わせてもらえるのかを書きます。

この記事でわかること

どんなときに効くか

自閉スペクトラム症や発達障害のある子に、聴覚過敏を伴うことがあります。まわりには気にならない音が、本人には耐えられない大きさで届きます。

ただし、使っているのはその子たちだけではありません。重い障害のある子が使っているところも見かけますし、我が家も2つ持っています。診断名で決まる道具ではなく、「うるさい場所が苦手かどうか」で決まる道具だと思っています。

外出で効いてくるのは、だいたいこの場面です。

  • 屋内の反響 体育館、ショッピングモール、駅のコンコース
  • 突然のアナウンス 予告なく鳴るので身構えられません
  • 暗転や大音量のある展示 プラネタリウム、シアター形式の施設
  • 人が多い場所のざわめき ひとつひとつは小さくても、重なると耐えられなくなります

行き先を選ぶときの確認項目はおでかけ先の選び方に、状況ごとのまとめは知的障害・発達障害の子と暮らすにあります。

イヤーマフ・耳栓・ノイズキャンセリングの違い

子どもが落ち着かなくなる原因で道具が分かれる図。突然の音がつらいならイヤーマフ、電車など続く音ならノイズキャンセリング、退屈や不安が原因なら好きな音楽で埋める。
仕組み向いている場面注意
イヤーマフ耳全体を覆って物理的に遮る子どもが自分で着け外しできる。急な音に強い重い。夏は蒸れる。目立つ
耳栓耳に入れて物理的に遮る小さく持ち運びやすい小さい子は誤飲の心配。嫌がる子が多い
ノイズキャンセリング電気的に連続音を打ち消す電車やエアコンの持続音突然の音には効きにくい。充電が要る

売り場では、イヤーマフを「パッシブタイプ」、ノイズキャンセリングを「アクティブタイプ」と呼び分けていることがあります。パッシブは電池が要らないぶん軽く、アクティブは電池を積むぶん重くなります。子どもが着けるなら、まずパッシブです。

ここを取り違えている方が多いです。ノイズキャンセリングが得意なのは、ずっと続いている音です。突然の大きな音には向きません。アナウンスや子どもの叫び声が苦手な場合は、物理的に覆うイヤーマフのほうが合います。

選ぶときに見るところ

  • 重さ まず重さです。子どもの首に負担がかかると、それだけで嫌がります。数字で比べてください
  • 締め付けの強さ 遮音性が高いものほど締め付けが強くなります。強すぎると頭が痛くなって外します
  • 頭のサイズに合うか 大人用しかない製品もあります。伸び縮みする幅を確認してください
  • 遮音の数値 NRRやSNRという数字で表されます。ただし高ければいいとは限りません。周りの声も聞こえなくなると、かえって不安になる子がいます
  • 折りたためるか 外出に持ち歩くなら、かさばり方が効いてきます

「いちばん遮音性が高いもの」を選ばないでください。重くて締め付けが強く、結局使わなくなるのがいちばんもったいない買い方です。

数字の目安を書いておきます。子ども向けの製品はおおむね120g〜400gの幅があります。最初の1つは200g前後の軽いものから試すほうが失敗しません。

もうひとつ大事なことがあります。聴覚が過敏な子は、触覚も過敏なことがよくあります。頭や耳に何かが当たること自体が嫌、というケースです。この場合は遮音の数字より、クッションのやわらかさと締め付けの弱さで選んでください。

買う前に試せるなら、それがいちばんです。貸し出しをしているお店や事業所があります。合わなかったときの損が大きい買い物なので、聞いてみる価値があります。

無音にはなりません

よくある誤解です。イヤーマフは耳を覆って音を小さくする道具で、音が消えるわけではありません。

じつは、そこが利点でもあります。人の声は意外と届きます。だから授業中に着けていても、先生の話は聞こえます。「着けたら何も聞こえなくなるのでは」と心配して使わせない方がいますが、そうはなりません。

逆に、完全に静かにしたいときには物足りません。遮音の数字が高い製品でも、静かな部屋のようにはなりません。

音で消すという方法もあります

音を遮るのがイヤーマフですが、好きな音で埋めるという手もあります。

我が家は、首にかけるタイプのイヤホンも持っています。音楽を聴くと落ち着くからです。耳をふさぐわけではないので、こちらの声も届きます。

場面で使い分けています。とにかく音を減らしたいときはイヤーマフ、退屈や不安から落ち着かなくなっているときは音楽です。原因が違うと、効く道具も違います。

子どもが嫌がるとき

買ったのに着けてくれない、というのはよくあります。順番を変えると受け入れることがあります。

  1. 静かな家の中で、短時間だけ着ける。「音がうるさいときの道具」としてではなく、まず物として慣れる
  2. 親が先に着けて見せる。特別なものではないと分かると、抵抗が下がることがあります
  3. つらくなってから着けない。すでに限界のときに顔まわりを触られると、余計に混乱します。入る前に着けるほうがうまくいきます

学校や施設で使わせてもらえるか

ここが、いちばん聞かれるところだと思います。

令和6年(2024年)4月1日から、事業者による合理的配慮の提供が義務になりました。障害者差別解消法が改正されたためです。行政機関(公立学校を含みます)は、それ以前から義務です。

内閣府は「合理的配慮の提供」をこう説明しています。

障害のある人から「社会の中にあるバリア(障壁)を取り除くために何らかの対応が必要」との意思が伝えられたときに、行政機関等や事業者が、負担が重すぎない範囲で必要かつ合理的な対応を行うこと

内閣府

イヤーマフを着けること自体は、学校や施設に費用も手間もかかりません。「負担が重すぎない範囲」の典型です。お願いする根拠になります。

大事なのは、こちらから意思を伝えることです。法律は「伝えられたときに」対応する仕組みなので、黙っていると始まりません。「音が苦手なので、イヤーマフを着けさせてください」と言えば足ります。

制度で買えるか

残念ながら、イヤーマフは補装具費支給制度の種目に入っていません。補装具の種目は国が定めていて、車椅子や座位保持装置、補聴器などが対象です。

ただし日常生活用具給付等事業のほうは、品目を市区町村が決めています。自治体によっては対象にしている可能性があります。聞いてみる価値はあります。

2つの制度の違いは障害児の福祉用具・グッズにまとめました。買う前に読んでおくと、使えるお金の範囲が変わります。

使ってみて

いちばん出番が多かったのはサッカー観戦です。歓声も音楽もアナウンスも大きくて、子どもには情報が多すぎる場所です。

意外だったのは、最後に眠くなってしまったときにも役に立ったことです。うるさい場所では、眠いのに眠れずに苦しそうになることがあります。そこでイヤーマフを着けると、落ち着いて眠れました。

「つらそうなときに着ける道具」だと思っていましたが、「休みたいときに着ける道具」でもありました。これは使ってみるまで分かりませんでした。

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