子ども用車いすとスクールバス|バギーのままでは乗れない理由

就学のときに、多くの家庭がここでつまずきます。スクールバスは、バギーでは乗れません。

そして、いちばん伝えたいのはここです。これは「バギーから車いすに乗り換える」話ではありません。1台増える話です。

うちは通学は車いす、ふだんは低学年までベビーカーでした。2台使い分けていました。それでいいのだと思っています。理由を書きます。

いちばん大切なことを先に書きます。通学する予定の学校に、スクールバスに乗るための要件を必ず確認してください。学校やバスによって条件が違います。要件は紙でもらえることがあるので、「紙でいただけますか」と聞いておくと、業者やPTさんに伝えるときに抜けません。

そのうえで、まずは療育医療センターのPT(理学療法士)さんや、整形外科の先生に相談するのがいいと思います。

うちは3月にPTさんに相談し、4月に東京の福祉機器展で実物を見て、それをもとにPTさんと再相談しました。この順番で、スムーズに進みました。

この記事でわかること

分かれ目は「車いすかバギーか」ではありません

ここを誤解している方が多いところです。本当の分かれ目は、その機種が車に載せることを前提に作られているかどうかです。

千葉県立袖ケ浦特別支援学校が、学校だより(2016年1月発行)でこれを正面から扱っています。

車いすやバギーには車載を前提に製作されている機種と、車載を前提にしていない機種があり…

千葉県立袖ケ浦特別支援学校「学校だより27」(2016年1月29日発行・PDF)

そして、学校としての方針もはっきり書かれています。

本校では、車載で使用できない車いすやバギーについては、車両に固定する乗車は行わないことになりました。

千葉県立袖ケ浦特別支援学校

まず、シールを見てください

同じ学校だよりが、保護者への最初の問いかけとして挙げているのがこれです。

「車内使用 出来ません」というシールは貼られていませんか?

千葉県立袖ケ浦特別支援学校

いま使っているバギーを見てください。このシールが貼ってあれば、その機種では車両に固定できません。就学の相談をする前に、ここを確認しておくと話が早いです。

医療機関や業者から「車両に固定して使うことはできません」と言われた記憶がある場合も同じです。

言われたのは、この3つでした

実際にスクールバスの相談で確認されたことを書きます。

1. ブレーキ

バスの中で車いすを固定するとき、まず車いす自身のブレーキをかけます。そのうえで固定ベルトとシートベルトを付けます。

つまり確実に止まるブレーキが付いていることが前提になります。ベビーカーのストッパーでは足りません。

2. 転倒防止バー

後輪の後ろに突き出ている、短い棒か小さな補助輪です。後ろに倒れるのを止めるためのもので、車いす下部のティッピングレバーに取り付けます。

なぜスクールバスで必要になるのか。後方転倒が起きるのは、背もたれに急に体重がかかったときと、手押しハンドルに下向きの力が加わったときです。リフトやスロープで傾いた状態、急発進、急ブレーキ。バスの乗り降りは、この条件がそろいます。

とくにティルトやリクライニングで後ろに倒せる機種は、重心が後ろに寄ります。姿勢を保てない子の車いすほど、必要になるということです。

後付けできる製品もあります。段差を越えるときに邪魔になるので、ワンタッチで収納できるタイプを選ぶと日常が楽です。

3. 固定できる構造か

バスの固定装置は、車いすのフレームにベルトのフックをかける仕組みです。かけられる場所がないと固定できません。

ここが、ベビーカー型のバギーで引っかかるところです。折りたためる軽い構造は、そのまま固定に耐えるフレームがないということでもあります。

規格としては、こう決まっています

気になる方のために書いておきます。車両の中で座席として使う車いすには国際規格があります。

  • ISO 7176-19 自動車の中で座席として使う車いすの規格
  • ISO 10542-1 車いす固定装置と乗員拘束装置の試験方法

試験はスレッドテストで行います。レールの上を走る台車に車いすを載せ、急に加速・減速させて、衝突のときにかかる力を再現します。

「車載できる車いす」は、そこまで試されている製品だということです。バギーが固定を断られるのは、意地悪ではありません。

家の車も、同じ話です

学校だよりに、家庭向けの確認方法も書かれていました。

車載ができる車両は、車検証に「車いす固定装置付」と記されています

千葉県立袖ケ浦特別支援学校

車検証を見てください。この記載がなければ、車いすのまま乗せる想定の車ではありません。

もうひとつ、同じ学校だよりから。

カーシートを自作のベルト等で固定していませんか? 車両の座席にカーシートを取り付ける場合、車両のシートベルトを使用すると安全な固定ができます。

千葉県立袖ケ浦特別支援学校

車での座らせ方については障害のある子とレンタカーにまとめました。法律上の免除と、安全は別の話だということも書いています。

それでも、バギーを手放さなくていいです

ここからが本題かもしれません。

「スクールバスに乗るには車いすが要る」と分かっても、すぐには切り替えられません。車いすは重いし、扱いが大変だし、何より慣れていないからです。

この「親のハードル」は、あまり語られません。でも現実には大きいです。畳めない、車に積みにくい、押すのに力が要る、人の手を借りる場面が増える。毎日のことなので、ここで詰まると外出そのものが減ります。

うちの答えはこうでした。

  • 通学は車いす バスに乗るために必要だから
  • ふだんは低学年までベビーカー 軽くて、畳めて、慣れているから

うちが使っていたのは、飛行機の機内に持ち込めるタイプのベビーカーで、約3kgでした。これがとても便利でした。畳んで自転車のかごに入れていました。そうすると、どこにでも行けます。

それがサイズアウトしてからは、ベビーザらスとアカチャンホンポに行って、実際に乗せてみて、いちばん車高が高いもの(座面の位置が高く、地面から離れているもの)にしました。

そのうえで、座面にバスタオルを敷きました。特にひざの下を厚くして、ひざを上に上げると、姿勢が保ちやすくなります。

どのくらい上げるとよいかは子どもによって違うので、PTさんに見てもらうと安心です。

使い分けていいのだと思います。就学で「切り替える」と考えると重たいですが、「1台増える」と考えると、だいぶ気が楽になります。

車いすには、思わぬ良さもありました

重い、大きい、という話をしましたが、使ってみて良かったこともあります。

見た目で伝わることです。

車いすだと、街の中で自然に優しくしてもらえます。道を空けてもらえる、エレベーターで順番を譲ってもらえる、店の人が席を考えてくれる。説明しなくても伝わるというのは、思っていたより大きなことでした。

逆に、バギーやベビーカーだと「畳んでください」と言われます。悪気があるわけではなく、ベビーカーに見えているだけです。国土交通省がそのためのポスターを出しているくらい、よくあることです。

この話はバギーと車椅子の違いにくわしく書きました。

つまり2台の違いは、こうなります。

バギー・ベビーカー車いす
重さと扱い軽い。畳める。慣れている
障害児用のバギーで、軽いもので6kg台、ティルト付きで10kg前後
うちが昔使っていたベビーカーは約3kg(機内に持ち込めるタイプ)
うちの車いすで約12kg(これでも軽いほうです)。畳めず、扱いが大変
まわりの反応ベビーカーに見える。畳んでと言われる一目で伝わる。優しくしてもらえる
スクールバス乗れない(車載対応でなければ)乗れる
家の車畳んでトランクへ固定装置付きの車なら、そのまま

どこで作るか

子ども用の福祉用具は、展示会でまとめて見比べられます。たとえば子どもの福祉用具展「キッズフェスタ」は、2026年は4月18日・19日に東京(有明GYM-EX)で開かれました。座ってみる、畳んでみる、車に積む動きを試してみる。カタログでは分からないところが分かります。

正直に書きます。「車載できる子ども用車いすの一覧」は、こちらでは作れませんでした。同じ型番でも、付けるオプションで車載の可否が変わるからです。

代わりに、確かめ方を書きます。

  1. 通学する学校に、要件を聞く 紙でもらえないかも聞く
  2. 療育医療センターのPTさん・整形外科に相談する 何が合うかを一緒に考えてもらう
  3. 福祉機器展で実物を見る 見たものをPTさんに持ち帰って、もう一度相談する
  4. いまのバギーのシールを見る 「車内使用 出来ません」があるかどうか
  5. 学校に、固定装置の形を聞く どういう固定をするバスなのか。ここが分かると業者の話が早くなります
  6. 業者に「車載対応で」と最初に言う あとから条件を足すと作り直しになります
  7. 転倒防止バーを付けるか、最初に決める あとからでも付けられますが、一緒に相談したほうが早いです

子ども用の車いす・バギーを作っているメーカーは、松永製作所、日進医療器、カワムラサイクル、ミキなどがあります。ほかに、その子に合わせて作る工房もあります。病院やリハビリの場で紹介してもらえることが多いです。

海外製の車いすはデザインがよいものが多いのですが、重いことが多いと感じています。毎日の積み下ろしを考えると、重さは大事です。展示会で見るときは、見た目だけでなく持ち上げてみてください。

お金と、いつ動き出すか

車いすは補装具費支給制度の対象です。原則1割負担で、世帯の所得に応じた上限があります。転倒防止バーのような部品も、この中で相談できます。意見書を書ける医師が決まっていることなど、申請の流れは短下肢装具と保護帽の申請に書きました。車いすも同じ補装具の流れです。

2024年4月から、障害児の補装具費には保護者の所得による制限がなくなりました。以前あきらめた方も、いまは違います。制度のくわしいところは障害児の福祉用具・グッズに書いています。

そして、時間がいちばんの問題です。

  • 就学の前の年の夏まで 就学相談の中で、通学手段の話が出ます。ここでバスに乗れるかが見えます
  • 秋のうちに業者と会う 主治医の意見書、市区町村への申請、判定と進みます
  • 採寸・仮合わせ・完成 その子に合わせて作るので、手元に届くまで数か月かかります

入学が決まってから動くと、間に合いません。前の年のうちに「バスに乗るなら何が要りますか」と聞いておいてください。

まとめ

  • 通学する予定の学校に、要件を必ず確認する。紙でもらえないかも聞く
  • 分かれ目は「車載対応かどうか」。まずシールを見る
  • 聞かれるのはブレーキ・転倒防止バー・固定できる構造
  • 家の車は、車検証に「車いす固定装置付」があるか
  • バギーは手放さなくていい。2台の使い分けでいい
  • 動き出すのは、就学の前の年から

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