障害のある子の通院がつらいとき、家に来てもらえる医療が3つあります。訪問診療(医師)、訪問歯科(歯科医師)、訪問薬局(薬剤師)です。どれも年齢や手帳の等級ではなく、「通院が難しいかどうか」で決まります。
看護師が来る訪問看護とは別のサービスです。組み合わせて使えます。
この記事の制度の内容は2026年10月時点のものです。
3つの違いを先に見ておく
| 訪問診療 | 訪問歯科 | 訪問薬局 | |
|---|---|---|---|
| 来る人 | 医師 | 歯科医師・歯科衛生士 | 薬剤師 |
| すること | 定期的な診察・処方・書類 | むし歯・歯周病の治療、口の中のケア | 薬を届ける、飲み方・残りの管理 |
| 始め方 | 在宅医に申し込む | 家族から直接申し込める | 医師の指示が要る |
| 保険 | 医療保険 | 医療保険 | 医療保険(子どもは介護保険の対象外) |
| 距離 | 原則16km以内 | 原則16km以内 | 原則16km以内 |
「16km以内」は保険で来てもらうための原則です。近くに無いと、そもそも頼めないということなので、探すときは距離から見てください。
「通院が難しい」は誰が決めるのか
決めるのは医師です。手帳の等級や年齢で一律に決まる基準はありません。
障害のある子の場合、次のような事情は相談する理由になります。
- 座位が保てず、車椅子で長く待つのがつらい
- 待合室の音や人の多さで、診察の前に崩れてしまう
- 移動に大人が2人要る(運転と、車内で体を支える人)
- 感染症にかかると重くなりやすく、人の多い場所を避けたい
うちの場合、通院で大変なのは待ち時間もそうですが、そもそも医療機関がバリアフリーになっていない、中が狭いこと。そして病院のほうが、うちのような子に慣れていないことです。
相談するときは、こうした事情もそのまま医師に伝えてください。「通院が難しいか」を判断する材料になります。
逆に、薬局の訪問については「家族や介助者の手を借りずに一人で来局できる人」は対象外とされています。子どもは一人では来られないので、ここで外れることはまずありません。
訪問診療:医師に定期的に来てもらう
「往診」とは別物です
| 訪問診療 | 往診 | |
|---|---|---|
| いつ | 計画を立てて定期的に(月2回など) | 熱が出たときなど、呼ばれたとき |
| きっかけ | 医師と立てた計画 | 家族からの連絡 |
実際には訪問診療で定期的に診てもらい、具合が悪いときに往診を頼む、という組み合わせになります。夜間や休日にも連絡がつく体制をとっている診療所(在宅療養支援診療所)もあります。
病院の主治医をやめる必要はありません
ここで迷う方が多いと思います。専門の病院の先生と、家に来る先生の両方にかかることはできます。どこまでを在宅の先生に任せるかは、両方の先生に相談して決めます。
在宅の先生にお願いできることの例です。
- ふだんの体調の確認と、いつもの薬の処方
- 訪問看護の指示書 訪問看護を使うには医師の指示書が要ります
- 熱やけいれんなど、急なときの相談先
子どもを診る在宅医は、まだ少ない
在宅医療は高齢の方が中心で、子どもの訪問診療をしている診療所は地域によって限られます。厚生労働省の資料でも、小児の訪問診療や訪問看護を提供する体制が地域によって十分でないことが課題として挙げられています。
だから、探し方の順番が大事です。
- いまかかっている病院の地域連携室(医療ソーシャルワーカー) 子どもを受けてくれる在宅医を把握していることが多いです
- 訪問看護ステーション 子どもを診ている訪問看護は、同じ地域の小児の在宅医とつながっています
- 相談支援専門員 障害福祉サービスの計画を立てている人です
- 医療情報ネット(ナビイ) 厚生労働省の検索サイトで、在宅医療をしている医療機関を全国から探せます
ナビイは厚生労働省 医療情報ネット(ナビイ)から使えます。ただし「在宅医療をしている」と「子どもを診ている」は別なので、見つけたら電話で確かめてください。
訪問歯科:歯医者に行けない子の歯を守る
歯医者は、障害のある子にとって特にハードルが高い場所です。診察台に座れない、口を開けていられない、機械の音が怖い。そのまま何年も行けずにいる、ということが起きやすいところです。
家族から直接申し込めます
訪問歯科は、医師の紹介がなくても、家族から歯科医院に直接申し込めます。対象は、病気や障害で通院が難しい人です。
家でできることの例です。
- むし歯・歯周病のチェックと治療
- 歯科衛生士による口の中のケア 歯石取りなど
- 家での歯みがきのやり方の相談 姿勢、道具、嫌がるときの工夫
家に持ち込める機材には限りがあるので、大きな治療が必要になったときは、病院の障害者歯科などを紹介されることがあります。それでも、ふだんのケアを家で続けられる意味は大きいです。
うちは、障害児歯科に行きはじめてから、歯医者のストレスがなくなりました。
家に来てもらうか、近所の歯科に通うか、の二択ではありません。障害のある子を診慣れている歯科に通うという選び方もあります。
探し方
- 地域の歯科医師会 訪問歯科の相談窓口を置いているところがあります(名前は地域で違います)
- 市区町村の保健センター 障害のある人を診る歯科の情報を持っていることがあります
- 訪問看護師・在宅医 同じ家に通っている歯科を知っていることが多いです
うちも訪問歯科を使ったことがあります。そのときはネットで調べて探しました。
ネットで見つけた場合も、最初の電話で「子どもを診ていますか」「この住所まで来てもらえますか」の2つは確かめてください。訪問歯科も高齢の方が中心のところが多く、距離は16km以内が原則です。
訪問薬局:薬を届けるだけではありません
薬剤師が家に来て、薬を届けるのに加えて飲み方や残りの量を一緒に見てくれるサービスです。処方箋を持って薬局で待つ時間がなくなります。
医師の指示が要ります
訪問歯科と違って、薬局の訪問は医師の指示があって初めて始められます。流れはこうなります。
- いつもの薬局に「家に来てもらうことはできますか」と聞く
- 主治医に「薬局の訪問を使いたい」と伝える 医師から薬局へ指示が出ます
- 薬剤師が計画を立てて、訪問が始まる
回数は、医療保険では原則として月4回までです(2026年10月時点)。
高齢の方だと介護保険の「居宅療養管理指導」になりますが、介護保険は原則40歳以上の制度なので、子どもは医療保険の「在宅患者訪問薬剤管理指導」になります。薬局で名前が出てきたときに混乱しないよう、書いておきます。
相談できることの例
- 粉にできるか、ゼリーに混ぜていいか 飲み込みにくい子の飲ませ方
- 1回分ずつ袋にまとめてもらう(一包化) 飲ませ忘れを減らす
- 病院が複数あるときの飲み合わせ
- たまってしまった薬の整理
訪問してくれる薬局は、ナビイの薬局機能情報提供制度(厚生労働省)の情報からも探せます。
お金はどのくらいかかるのか
3つとも医療保険なので、窓口での負担の考え方はふつうの通院と同じです。そのうえで、子どもの医療費助成や、重度の障害のある人の医療費助成で、自己負担がなくなったり減ったりする自治体が多いです。
ただし助成の対象年齢・所得の条件・どこまで助成されるかは、自治体で違います。また、訪問にかかる交通費は別にお願いされることがあります。申し込む前に、次の2つを聞いておくと安心です。
- 医療機関に:「交通費などの保険外の費用はかかりますか」
- 市区町村に:「訪問診療も医療費助成の対象になりますか」
医療費助成以外の制度は制度とお金にまとめています。
最初の電話で聞くこと
在宅医・訪問歯科・薬局、どこに電話するときも使えるように、確認したいことを表にしました。
| 聞くこと | なぜ聞くか |
|---|---|
| 子どもを診ていますか。何歳からですか | 在宅医療は高齢の方が中心。ここで断られることがいちばん多い |
| 住所(町名まで)を伝えて、訪問できる範囲か | 16km以内が原則 |
| どんな障害・ケアがあるか | 座位が保てない、発作がある、など。診断名より状態を伝えるほうが話が早い |
| 来られる曜日と時間帯 | 学校や放課後等デイ、訪問看護の時間と重ならないように |
| 夜間・休日の連絡先はあるか | 訪問診療のとき。急なときに誰に電話するかを決めておく |
| 病院の主治医と連絡をとってもらえるか | 二人の先生の間で話が食い違わないように |
| 交通費などの保険外の費用 | あとで驚かないように |
よくある質問
障害児でも訪問診療は受けられますか
受けられます。年齢の制限はなく、通院が難しいと医師が判断すれば対象です。ただ子どもを診る在宅医は限られるので、まずはいまの病院の地域連携室に相談するのが近道です。
歯医者だけ家に来てもらうことはできますか
できます。訪問歯科は訪問診療を使っていなくても、家族から歯科医院に直接申し込めます。
訪問看護と訪問診療は、どちらから始めればいいですか
どちらからでも始められます。ただ訪問看護は医師の指示書が要るので、病院の主治医が書いてくれるならそのまま訪問看護から、書いてもらいにくいなら在宅医を探すところから、という順番になります。訪問看護については訪問看護サービスに書いています。
まとめ
- 家に来てもらえる医療は、訪問診療・訪問歯科・訪問薬局の3つ。訪問看護とは別に使える
- 決め手は「通院が難しいか」。手帳の等級や年齢ではない
- 原則16km以内。探すときは距離から
- 歯科は家族から直接、薬局は医師の指示が要る
- 子どもを診る在宅医は少ない。病院の地域連携室と訪問看護から当たる
次にやることは1つです。次の通院のときに、病院の地域連携室に「子どもを診てくれる在宅の先生はいますか」と聞いてみてください。
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